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De Groeten van Mike! マイクから、よろしく!

オランダ映画 (2012)

「良い子の悪戯っ子」が大活躍するのはオランダの子供映画の伝統。『Kruimeltje(クラムチェ)』(1999)、『Pietje Bell(ピチェ・ベル)』2作(2002、2003)から始まり、この作品を経て、『Brammetje Baas(ブラムチェ・バース)』(2012)などにつながる。なぜか、1本も日本には紹介されていない。アメリカの類似の映画と違うのは、ドタバタに走らず、子役の心理状態をじっくり見せるところ。だから、よほど演技が巧くないと務まらない。ひょうきんな場面が多いので、2枚目ではなく3枚目が定番。そこがまた可愛い。この映画で主役を務めるマース・ブロンクハウゼン(Maas Bronkhuyzen)は、まさに適役だ。

小児白血病で長期入院していたマイクは、最後に施した骨髄移植が効果を上げて完全寛解に近づいている。本来、明るい性格のマイクだが、寂しいことが一つあった。それは、この数ヶ月、一度も母が見舞いに来てくれないことだ。母は、高度のアルコール依存症で毎日酔っ払って無気力に過していた〔アパートから病院までかなり遠いので、車のない母にとって(尤も、あっても飲酒運転になるが)、見舞いに行くにも気力と体力が必要だった〕。病院では、マイクの退院について母親と連絡を取るが、連絡がつかない。いつまでも入院させてはおけないので、児童福祉事務所に連絡し、やってきたのが、「きわめて事務的で、子供の幸せよりも自分の身だしなみのことしか考えない冷たい女性」。マイクが『プードル』とあだ名を付けたその女性から、「家で暮らせない時は、どこか別の場所に行くことになる」と告げられる。それまでいた病室から、退院までの期間入っているようにと移された病室には、先客がいた。交通事故で下半身マヒになったフィンセントだ。不機嫌を引きずったまま会ったマイクは、フィンセントと険悪な仲になる。3日後に母がようやく病院を訪れ、マイクは有頂天になるが、病院側は、母に対し、マイクの養育に関して家庭裁判所の判断を求めたと告げる。つまり、母がマイクを連れて帰宅することを拒否したのだ。マイクは、判事に手紙を書いて、何でも自分でできるから帰宅させて欲しいと訴える。その間に、マイクとフィンセントの関係は次第に良くなる。特に、部屋から出ようとしないフィンセントを、車椅子で競争できるまでにしたことは、フィンセントの両親を喜ばせる。クリスマスが近づいたある日、判事が直接病院を訪れマイクに聴取する。そして、その数日後、『プードル』と母が一緒に病院にやって来る。マイクは期待するが、『プードル』は「当面あなたは里親に預けられる」と告げる。自暴自棄になったマイクに、母は立ち直ると誓う。それでも、里親に引き取られることに変わりない。悩むマイクに、フィンセントは「欲しくないと思わせる」ようアドバイス。マイクは、連れて行かれた里親の家でそれを実践し、その日のうちに病院に返される。マイクがホッとしたのも束の間、クリスマスの前日にやってきた『プードル』は、これから孤児院に連れて行くと告げる。マイクは、フィンセントの協力で、車椅子に乗って病室から逃げ出し、そのままアパートへと向かう。しかし、部屋の中には酒ビンが多数ころがり、雑然と放置されたままで、母の姿はどこにもなかった。その頃、母は、マイクとの誓いを守ってアルコール依存症の治療施設にいたのだが、彼にそれを知るよしはない。マイクが警察から隠れるために寒い鳩小屋で夜を過ごしている時、母は、クリスマスということで、2時間だけ出所を許可され、病室を訪れる。しかし、当然、そこにはマイクはいなくて、逃げ出したと告げられる。母は、タクシーでアパートに急行し、鳩小屋で意識不明になっているマイクを見つけ、病院に緊急通報する。病院のERに移送され、事なきを得たマイクを見て、母は施設に戻る。マイクが良くなってフィンセントに会いに行くと、フィンセントは拒否反応を示す。彼は、マイクの逃走を手助けし、逃走先を知っていたのに隠し続けたが、それがマイクの白血病の再発の可能性につながるとは知らなかった。親友を死なせたかもしれないという自責の念が、逆に、そんなことをさせたマイクへの怒りとなって現れたのだ。しかし、その怒りも、病院恒例の、「退院していく子供へのインタビュー」の内容を聞いて収まり、マイクと別れる悲しさに変わる。『プードル』に連れられ、病院を出て行くマイクを、フィンセントやマイクと親しい病院の職員が見送る。マイクがいなくなった後の会話の中で、マイクの母に対する情報の混乱がすべての原因であることが分かり、フィンセントたちは大急ぎで、判事に相談に出かける。幸い、判事は非情に柔軟で温かい人物だったため、マイクは、孤児院に入らずに済み、母の治療が終わればアパートで一緒に暮らせることになり、それまでの3ヶ月はフィンセントの家で暮らしてもいいことになった。そして、半年後の誕生日の日…

主演はマース・ブロンクハウゼン、助演がファース・ヴェン(Faas Wijn)。誕生日は2001.2.26と1999.5.15なので、2歳 離れている。2人は、2年後の『Oorlogsgeheimen(守るべき秘密)』(2014)でも共演している。ただし、マースは主役だが、ファースは端役。2人の写真を2枚目と3枚目に示す。この映画は、ナチス支配下のオランダを描いたシリアスなドラマだが、マースの雰囲気は変わっていない。一方、ファースの方はかなり大人びて面影はあまりない。因みに、1枚目は、マースがこの映画の1年前に準主役で出た『Dolfje Weerwolfje(小さな狼男アルフィー)』(2011)の写真。9歳の時だが2枚目の12歳とあまり変わらない。
  
  
  


あらすじ

映画は、小児科病棟の大部屋から始まる。中には6つのベッドが並んでいる。医師が、ロッテの回診を終え、隣のユールンに移ると、足をはさんで反対側のベッドのマイクがロッテに話しかける。マイクは、元気一杯で、普通の服を着ている。「これ、イチゴが入ってておいしいよ」とベッドサイドに食べないまま置いてあるカップ入りのお菓子を渡そうとする。「要らない。お腹空いてない」。ロッテは元気がない。マイクは、元気付けようと、「食べないと、死んじゃうよ」と言うと、カップに自分の口を突っ込み、「抜けない! 取れなくなっちゃった!」とふざけて、ロッテを笑わせる。看護婦に制止され、カップを取ると、口の周りはイチゴクリームだらけ。それを着ている服の腕で拭き取り、「何がムカつくか知ってる? ニンジンだ」とロッテに言うと(1枚目の写真、口の周りにクリームが残っている)、自分のベッドに飛び込んで次の回診を待つ。これだけのイントロで、マイクの明るくてひょうきんな性格がよく分かる。マイクが頭に被っているのは、自分で「幸運〔gelukspetje〕」と呼んでいる帽子。この帽子を被っていれば病気が良くなると信じている。主治医は、マイクに「検査結果が分かったぞ」と話しかける。「ホント?」と立ち上がって見ようとする。次のシーンでは、主治医の部屋に連れて来られたマイクが、検査結果の顕微鏡を勝手に覗いている(2枚目の写真)。「おいおいマイク、触っちゃダメだ」。「紫色の球があるよ」。「お母さんがみえるまで待とう」。「これって、いいの悪いの?」。「何がだい?」。「紫色の球」。「それは、君の新しい骨髄から作られたんだ」。「母さんからもらったやつ?」。「そうだよ」。医者は看護婦に、「まだ来てないのか?」と小声で尋ねる。「何度も伝言を入れたんですが、つかまりません」。マイクは、「この紫の球、何してるの?」と訊く。「君を病気にした悪い細胞を食べてくれてる」。「じゃあ、僕、よくなるんだ!」(3枚目の写真)。「話の続きは、お母さんがみえたらにしよう…」「だがな、良さそうだぞ」と ニコニコしながら、こそっと付け加える。「ウチに帰れるの?!」。「そうだな…」。マイクは、最後まで聞かずに部屋を飛び出して行った。そして、ロビーを見下ろす2階のバルコニーから、「ウチに帰れる!」と嬉しそうに叫ぶ。1階の受付の男性が、「何だって?」と訊き返すと、「ウチに帰れる!」と笑顔でもう一度叫ぶ。男性は、両手の親指を立てて祝福してくれる。2人は大の仲良しだ。そのあと、マイクは、厨房に飛び込んでいき、コックが運んでいた百個近くのトマトを、うっかり床にぶちまけてしまう。大部屋に戻ったマイクは、さっそく荷造りを始める。マイクの病気は小児ALL(急性リンパ性白血病)。国立がん研究センター、希少がんセンターのホームページには、「治療期間は約2年間です。再発のリスクが著しく高いグループ(完全寛解に至らないなど)には、造血幹細胞移植が行われることがあります。また、白血病細胞の中枢神経浸潤がある場合は、放射線治療が行われることがあります。小児急性リンパ性白血病全体で、約98%から99%に完全寛解(顕微鏡など目に見えるレベルで白血病細胞が消失している状態)が、約80%に長期生存が期待されます」とある。このことから、以下のことが分かる。①マイクはかなり長期間入院していた〔スタッフに顔なじみが多い〕、②マイクの小児ALLの悪性度は高い部類に属する〔マイクは母親の骨髄の移植を受け、後から分かるが、放射線治療も受けている〕、③たとえマイクが完全寛解しても、必ずしも長期生存には直結しない〔この映画はマイクの闘病映画ではなく、映画の中では治ったようにみえる〕。マイクが長生きしまうように!
  
  
  

マイクには、看護婦の「何度も伝言を入れたんですが、つかまりません」という言葉は聞こえていない。だから、いくら2階のバルコニーでロビーを見ながら待っていても、母は現れない(1枚目の写真)。そこに、マイクにはいつも意地悪なユールンが現れ、「まだなのか? いつも忘れられてるな」と憎まれ口を叩く。マイクが、玄関の外に出て溜息をついていると、受付の男性が、「行く前に、チョコ・デラックスを食べる暇くらいあるだろ?」と声をかける。恐らく、それからしばらくして、マイクは、中年の女性の前に座らされている。「あなたの様子を見に来たの。私は、シリアよ」と、握手しようと手を差し出す(2枚目の写真)。マイクは、腕組みをしたまま動かない。「私は、児童福祉機関で働いているの。あなた、ここに随分長くいるわね。重い病気だったんでしょ?」。そして、「この数ヶ月、お母さんは何回会いに来た?」と訊く。「知らないよ。でも、忙しいんだ」。「寂しくないの?」。マイクは言葉に詰まる。「マイク、私達は、あなたのお母さんのことが心配なの。看護婦さんとの約束もいつも忘れるし、私達もなかなか会えない。こんな状態で 家に戻っても大丈夫かしら?」。「大丈夫だよ」。「お母さんが面倒を見てくれない場合は… つまりね、あなたが家で暮らせない時は、どこか別の場所に行くことになるわよ」。この言葉にマイクは茫然とする(3枚目の写真)。
  
  
  

マイクが、不機嫌な顔で大部屋に戻ると、自分のベッドにユールンが横になっている。「僕のベッドだ」。「出てかなかったのか?」。少年は、他の子供たちに向かって、「みんな、マイクのママと幽霊の類似点は何だと思う? 両方とも存在しないんだ」とからかう。他の子供たちが笑う。怒ったマイクと少年は、取っ組み合いのケンカになる。その刺激が強すぎたのか、ユールンが持病の癲癇発作を起こし、マイクが急いでナースコールを押す。以前紹介したアメリカ映画『...First Do No Harm(誤診療/何よりも害をなすなかれ)』では、難治性小児癲癇の治療法としてケトン食療法の知られざる有効性がテーマだったが、ケトンをしていればこんな発作は起きないと思うので、2011年段階のオランダの主要病院ではケトン食療法をしていないのかも。さて、マイクが馴染みの看護婦に連れて行かれた先は、広い2人部屋。看護婦は、先に入室している少年に、「フィンセント、この子はマイク、あなたのルームメイトよ」と紹介する(1枚目の写真)。フィンセントは左足に大きなギブスをはめている。マイク役のマース・ブロンクハウゼンとフィンセント役のファース・ヴェンとは2歳離れているが、映画の中でもマイクの方が確かに幼く見える。それなのに、マイクがかけた言葉は、「よろしく」でも「やあ」でもなく、「ユールンみたいなクソだったら、ボコボコにするからな」。小学6年生が、4年生からこんなことを言われたら腹が立つであろう。看護婦はフィンセントに、「小児病棟について質問があったら、何でもマイクに訊くといいわ」と言うが〔フィンセントは入院して間がない〕、「こんな生意気な奴」と思ったフィンセントには訊く気など全くない。看護婦が去った後、マイクは、「事故に遭ったの?」と尋ねる。「ああ」。「車と?」(2枚目の写真)。「自転車で?」。フィンセントには生意気なチビに答えるつもりはないので、向こうをむいてしまう(3枚目の写真)。「どのくらい入院するの?」。「眠りたい」。「つまんない奴」。そこに、フィンセントの両親が見舞いに来る。マイクは、ベッドの真上の壁にアヤックス・アムステルダムの大きなポスターを貼ろうとしている。それを見た母親は、「楽しそうな、ルームメイトね」と言うが、フィンセントはうんざり顔だ。
  
  
  

3日後、マイクが入院している子供たちの勉強ルームで、ユールンに嫌がらせをして遊んでいると〔相手の方が少し年上〕、ユールンに遊び道具の粘着ゴムを取られてガラスに放り投げられる。マイクがそれを剥がしに行くと、そこから母がロビーに入って来るのが見えた。マイクは、そのまま1階に走って降りて行き、母に抱き付く(1枚目の写真)。如何にも甘えん坊といった感じ。しかし、すぐに現実に戻り、「何でもっと前に来なかったの?」と不満をぶつける。母は、マシュマロ入りの大きな袋を渡して誤魔化す。「荷物を取りに行きましょ」。ナースステーションの前では、四つん這いになって姿を見られないようにするが、マイクも遊びでやっているように喜んでつき合う。病室に戻ったマイクは、母からもらったマシュマロを口に詰め込み、母は、マイクの穴の開いた服をバッグに詰める。そこに、看護婦が入って来る。冷たい声で、「ファジロフスキーさん」と声をかける。主治医の部屋に呼ばれた母は、看護婦から「あなたは、3日前に来るべきでした」と告げられる。「ええ、でも、忙しかったのよ。そう言わなかった?」。「電話もかけられないくらい?」。「今、来てるじゃない」。「マイクは、すごくがっかりしていました。一体これで何度目ですか?」。ここで、医者が「今後は、児童福祉局が介入します。マイクを連れ帰ることはできません」とストレートに話す。ドアの外で盗み聴きしていたマイクの表情が変わり(2枚目の写真)、今までチャラチャラしていた母親も真顔になる。「そんなの勝手に決めて! あたしは母親よ!」と文句を言うが、看護婦は、「この数ヶ月、顔も見せなかったでしょ」と批判し、医者は、「マイクの今後については、家庭裁判所が判断します」ともう一度ストレートに告げる。「何バカ言ってんのよ。マイクは連れて帰るわ!」。「その場合、警察を呼びます」〔親といえども児童誘拐になる〕。母は、「あたしが手放すと思わないで」と言って席を立つ。看護婦は「ナターシャ」と呼び止め、アルコール依存症の治療施設のパンフレットを渡し、「マイクには、いつも酒場に入り浸っている母親なんか要らない」と諭すが、「いらぬお世話よ」と取り合わない。マイクは、母の追ってエレベーターまで走る。母はボタンを押しながら、「何様のつもり? 偉ぶって」と息巻いている。マイクが「僕、連れてって」と、すがるように頼むと(3枚目の写真)、「ごめんなさい、坊や。今は連れていけないの」と正直に言う。「でも、何でさ?」。「お節介焼きどものせいよ」。それでも、マイクはエレベーターに乗り込むが、「ちゃんと話し合うから。約束する。欲しいお菓子のこと考えてて」と言われて外に出される〔すべて嘘〕
  
  
  

看護婦は、マイクを慰めようと、「あなたが家に帰れたらいいって思ってるわ。だって、ここが静かになるでしょ。でも、ちょんと治ってもらわないと困るの」。「治ってる」。「ちゃんと薬を飲まないと、また病気になるわ。きちんと食べて寝ることも必要。着てるものも洗わないと。あなたのお母さんには無理なの」。「もし、僕が全部自分でやれたら、家に帰れる?」(1枚目の写真)。「家庭裁判所が決めることよ」。意気消沈したマイクが病室に戻ると、フィンセントが、自分にきたハガキを2つに裂いて床に投げ捨てている。マイクが「おい、拾えよ」と注意する。「知るもんか」。マイクは拾ってゴミ箱に入れる。ヴィンセンはレポート用紙をつかむと、鉛筆を持って何か書こうと考える。それを見たマイクは、あることを思いつく(2枚目の写真、矢印はレポート用紙)。マイクは、夜になってフィンセントが眠ると、用紙を1枚頂戴し、鉛筆も借りる。そして、テーブルに紙を置いて書き始める。「今日は。児童さい官様。ぼくはマイク。10さいです… ぼくは家に帰れます。ぼくらの家がそうじしてないとか、ぼくの服がきたないとか、ぼくが康的なものを食べないとか、心配しないでください。ぼくは薬の飲みかたを正しく知っています。だから家に帰れます。マイクから、よろしく」〔太字はスペルミス。漢字は、学習指導要領で4年生までに習うものに限定した〕。映像では、マイクが自分のベッドをきちんと直したり、病室の洗面台で自分の着る物を全部洗濯したりする姿が映される。健康食の部分では、病院のコックに、「料理のやり方教えて」と訊いたりもする。「トマト・スープでいいか?」〔マイクは大嫌い〕と言われ、すごすごと引き下がる。薬の部分では、テーブルの上に薬を並べて考える(3枚目の写真、矢印は各種の薬)。
  
  
  

夜、マイクが眠れずに横になっていると、隣でフィンセントがベッドから落ちる音がする。「待って、手伝うよ」。マイクはフィンセントの上半身を起こし、吊り輪を握れるようにする(1枚目の写真)。そして、動かない足をベッドに載せる。そして、「なぜ、松葉づえで歩かないの?」と訊く。「できない」。「だけど、片方の脚にギブスしてるだけだろ?」。「脊椎が傷ついてる。分かるか? もう歩けないんだ」。「二度と?」(2枚目の写真)。返事はない。マイクは、最後までとっておいたマシュマロを渡す。ようやくフィンセントの方から話しかける。「君の病気は?」。「白血病。癌の一種」。「知ってる。血液の病気だろ」。「だけど、もう治ったんだ」。「じゃあ、なぜまだいるんだ?」。「それは… 今週、家に帰る」と、嘘をつく。そして、話がややこしくならないよう、電気を消して寝るフリをする。翌朝、リハビリ担当の若者が病室にやって来て、フィンセントに、「よう相棒、永久にベッドで寝てる気か?」と声をかける。そして、リハビリ用にプールもあると話すが、フィンセントは1枚の紙をずっと見ている。マイクは、その紙が昨夜書いた手紙だと気付いて、「勝手に取るなよ」とひったくる(3枚目の写真、矢印は手紙)。若者は、「わお、ラブレターか」と冷やかすが、フィンセントは、「裁判官の『判』は、『番』じゃない。健康的の『健』は『建』じゃない」と間違いを指摘する。マイクはさっそく手紙を訂正する。一方、若者は、「お尻をベッドの端に動かして」と言うが、フィンセントは動こうとしない。マイクは、「車椅子の最初の字は『車』だ」と言うと、手紙を出そうと病室を出て走り出す。
  
  
  

マイクは、受付の男性に、「封筒ある?」と訊く。男性は、「さあ、どうぞ」と冗談っぼく渡し、マイクは、「じゃあ、これプードルに」と手紙を封筒に入れる。「プードルって?」。「児童福祉のおばさん」。そして、「切手は?」と訊く。男性は、「切手は要りません、軍曹殿。郵便室が処理します」と敬礼の真似。さらに、「クッキーは?」とお菓子を食べさせる。この2人、実に仲が良い。その日の午後、フィンセントのクラスメイト2人がお見舞いに来る。マイクは、フィンセントの車椅子に乗って遊んでいる(1枚目の写真)。フィンセント:「グループは もうできた?」。友達1:「オリヴィエとイェスと僕が一緒」。友達2:「もちろん、君もだよ」。友達2:「治ったらね」。フィンセントには返す言葉がない。そのうち、友達1が、車椅子で遊んでいるマイクを見て、「あれ、君の車椅子?」と尋ねる。「違う、『彼』のだ」。マイクは当然、びっくりする。フィンセントのベッドの真上の壁には、もらったカードがいっぱい貼ってある(1枚目の写真に映っている)。それを見た友達1が、「僕のハガキ、届かなかった?」と訊く。「ううん」。そこで、マイクが車椅子の仕返しをする。友達1を見て「飛行機のだろ?」と思わせぶりに訊く〔以前、マイクが拾ってゴミ箱に入れたのは、飛行機の絵ハガキだった〕。フィンセントと友達の間に気まずい空気が流れる。マイクは、さっさと逃げ出し、ロッテのいる大部屋に直行。ロッテは長く延びた数珠球を見ている。「あんたに追いついたわ」と言うが〔百個以上あるが、医療行為の度に追加しているらしい〕、マイクが「僕の方が長いよ」と言うと、「でも、明日は2つ増えるわ」。「1つは化学療法だろ」。「それに、頭に放射線を当てるの」。「僕もやったよ」。「怖かった?」。「母さんは僕が死ぬんじゃないかって思って、これをくれた」と臙脂(えんじ)色の帽子に触る。「これは僕の『幸運』なんだ。これを被ってれば すぐ良くなるよ」と言うと、帽子をロッテにプレゼントする(2枚目の写真、矢印は帽子)。その夜、マイクはベッドに横になってTVを観ている。ベッドの足元のテーブルの上に1人に1台、30インチくらいの液晶TVが置いてある。そこでは、その日に退院する子供へのインタビューが放送されている。「ファラ、ようこそ。そのケーキは誰に?」。「看護婦さん」。「ちょっともらってもいい?」。これを聞いたマイクが、「ますます太るぞ」〔司会は肥満体〕と言うと、アイマスクをしたフィンセントも思わずニヤリとする。翌朝、リハビリ担当がまたやって来て、「バランス感覚を取り戻さないと」と言って、フィンセントを車椅子に強制移動させる。その時、呼び出しがかかり、若者がいなくなる。入れ替わりに入って来たマイクは、「何してる? それって、『僕』の車椅子じゃないか」と、昨日のお返しをする(3枚目の写真)。「バカ言うな」。「じゃあ、どうして友達に、『自分』のだって言わなかった?」。今度はフィンセントが逆襲する。「どうして、家に帰るなんて言ったんだ?」。
  
  
  

嘘をついたことを反省したマイクは、「これから下に行く」と言うと、フィンセントの車椅子を押し始める。「おい!」。「あのノッポと一緒の方がいいのか?」。マイクはフィンセントをロビーに連れて行く。クリスマスが近いので、吹き抜けのロビーには巨大なツリーが飾ってある。物珍しげにロビーを見ているフィンセントは楽しそうだ(1枚目の写真)。マイクは、玄関に並んでいた車椅子に乗ってくると(2枚目の写真)、「いいか、競争だぞ、3、2、1、行くぞ」と車椅子を走らせる。フィンセントも見よう見まねで動かし、年上の分、腕力があるので負けじと追っていく。その頃、2階のバルコニーでは、主治医がフィンセントの両親に、①事故の後遺症から立ち直れていない、②このままでは心理学的な処置が必要、と話している。その時、下から歓声が聞こえ、2人が競争しているのが見える。急いで降りて来た両親を見つけたフィンセントは、「すごく速かったの見た?」と嬉しそうに訊く。父:「タイヤが軋ってたな」(3枚目の写真)。
  
  
  

競争に勝ったマイクは、お腹のセータを顔にかけてぐるぐる回っている。すると、玄関から入って来た『プードル』こと児童福祉の「温かみゼロで、子供のためでなく生計のために仕事をしているだけの」女性にぶつかる。ぶつかられたことで、冷たい声で「マイク」と咎める『プードル』。一方、もう一人の女性は、優しい顔で、「あなたがマイクね?」と声をかける(1枚目の写真、左が『プードル』~髪型と服装に凝っている。右が判事~髪型も服装も構っていない)。マイクには、何が何だか分からない。女性が「家庭裁判所の判事よ」と自己紹介すると、マイクは緊張する(2枚目の写真)。昨日、マイクが受付男性とふざけていたカルテ室で、判事とマイクの対話が行われる。「あなたは、年齢の割りに、独立心旺盛なのね」。「うん」。「きれいな字で書いてある」。「僕、全部自分でやるから、母さんは何もしなくていいんだ」。「でもね、あなた達の年頃の子供には、遊ぶことも大切なのよ」。「母さんといっぱい遊ぶから大丈夫。TVだって観れるし。飲まなくちゃいけない薬は全部知ってるんだ。バクトリム、メトトレキサート、シクロスポリン」〔抗菌薬合剤、抗がん剤、免疫抑制剤〕。「病気だった頃のこと覚えてる?」。「とっても疲れて、あちこちにアザができた。でも、もう治ったよ」。「なら、よく分かると思うけど、お母さんは病気なの」。「なら、きっと良くなるよ」。「そうよ、でも それまでどこに住むの?」。「ここにいるよ」(3枚目の写真)。「病院は住むところじゃない、治すところよ」。「もう何ヶ月も ここにいるよ」。「それって、長過ぎるんじゃない?」。マイクの聴取は不安な言葉で終わった。
  
  
  

フィンセントがギブスを取ることになり、作業室に連れて来られる。両親とマイクも一緒だ。マイクは、部屋に置いてあった骸骨の模型を使って、フィンセントを笑わせている(1枚目の写真)。少しやり過ぎて、「フィンセント、食べちゃうぞ」と骸骨に言わせたのを聞いた技士は、「悪戯っ子は、モルモットになりたいらしいな」と言ってマイクを呼ぶ。すると、もう一人がマイクの腕をがっちり押え、腕を剥き出しにする。マイクは怖そうだ。技士の手には、電動カッターが握られている。そして、カッターを回転させ「腕は痛いかな?」と訊く。マイクは、「硬膜外麻酔に比べれば全然怖くないや」と強がるが、カッターが腕に近づくと思わず引こうとするが動かせない。技士は、「このノコギリは、どんな石膏でもスパッと切れる」と言いながら、腕に近づける。「肌に触れると振動するだけだ」。これには、マイクもホッとする。この予行演習を見て、フィンセントも安心してギブスを外すことができた。リハビリ室に移ったフィンセントはトランポリンの上に横になり、その脇でマイクが飛び跳ねている。飛ぶのをやめたマイクは、フィンセントの膝をぎゅっとつかんで、「感じる?」と訊く。「ううん」。次に足の指に触って「今度は感じる?」と訊く(2枚目の写真)。「二度と感じないんだ」(3枚目の写真、二すじの涙)。
  
  
  

マイクがもう一度ジャンプを始めると、ドアが開いて『プードル』が顔を見せる。それを見たマイクは、「くそ、プードルだ」と言ってフィンセントの横に寝て姿を隠す(1枚目の写真)。そんなことはお見通しの『プードル』は、「誰と一緒か、見たら?」と声をかける。後ろにいたのは母だった。マイクは、「ママ」と叫ぶと、真っ直ぐ飛び付く(2枚目の写真、もう10歳なので かなりの衝撃)。3人は食堂で一緒に席につく。母は、『プードル』に、マイクはすぐに隠れていなくなり、家中を捜していなかった時は、鳩小屋に隠れていたと、昔の話をする。その間、マイクは、コーラに発泡剤を入れ、中身が溢れ出すのを見て楽しんでいる(3枚目の写真、矢印は溢れ出した泡)。マイクにとっては楽しいひと時となるはずだったが…
  
  
  

『プードル』に、「マイクに話す事があったんじゃない?」と促された母は、「あたしたち裁判所に行ったの。おっきな建物だった」と言ったきり、先が続かない。母には任せられないと悟った『プードル』は、彼女にしては優しい顔で、「マイク、当面あなたは里親に預けられることになったの」と伝える。マイクは、信じられないといった顔で母を見る(1枚目の写真)。そして、席を立つと、「嫌だ、行かない!」と言い、出て行こうとする。母は、マイクの腕を取り、「ごめんね」と言うが、マイクは「約束したじゃないか!」と叫び(2枚目の写真)、食堂の端にある水盤に行き、滝のように落ちてくる水の下に入る。全身びしょ濡れだ。母は、中に入って行き、マイクを抱いて出そうとする。「嫌だ、行かない」。「ちゃんとするから。ホントよ」。「もう信じない」。「チャンスをちょうだい。一緒に暮らしましょ。前みたいにはしない」。『プードル』は、「ナターシャ、守れない約束なんかするんじゃないの」と批判する。母:「マイク、あたしを見て。絶対ちゃんとするから。やってみせる。誓うわ」。その言葉に、マイクがすがるように抱き付く(3枚目の写真)。ほろリとさせられるシーンだ。マース・ブロンクハウゼンの3枚の顔。表情の変化は実に見事だ。
  
  
  

バスタオルで全身を覆ったマイクが、元気なく病室に戻る。そして、何も言わずにベッドに横になる。「何でずぶ濡れなんだ?」と訊かれると、カーテンを引いて「話したくない」と意思表示。フィンセントは、両親からもらったオモチャのヘリを飛ばし、カーテンを回り込んでマイクの真横に着陸させる。「巧いだろ? 見えてないんだぞ」。「じゃあ、めくらになったんか?」。マイクは、ヘリを放り出して、「里子に出されちゃう」と打ち明ける(1枚目の写真)。この言葉にフィンセントはショックを受ける(2枚目の写真)。一方、アパートでは、母が電話をかけている。「部屋がないですって?」「そんなのダメ、今すぐでないと」「そんなの構わない。今すぐ行く」。母は、散らかった部屋の中で、大急ぎで荷造りをする。この短いシーンの後、場面は再び病院に戻り、マイクがフィンセントの車椅子を押している。「里親はいつ来るんだ?」。「明日」。ここで、フィンセントが思いつく。「君が里親の所に行きたくないなら、『要らない』と思わせればいいんだ。食べ散らかすとかして。僕の母さん、そんなの大嫌いだ」。マイク:「ゲップだってできる」(3枚目の写真)。フィンセントは、その先にある「精神科」の表示を見て、マイクを連れて行く。そこの娯楽室で、患者の見せる様々な動作をマイクはじっくり観察する。
  
  
  

翌日。フィンセントがいち早く「来たぞ」と言い、マイクは靴を履いたままベッドに大急ぎで横になる。『プードル』が、今日は笑顔で入ってくる。そして、にこやかな笑顔の夫婦がそれに続く。マイクは、ゴム手袋をはめ、体を前後に揺すったかと思うと、急に、「くそ野郎! 失せろ!」と怒鳴る。そして、女性の方が自己紹介を始めると、狂人のフリをして、手に持ったものを投げる。そうかと思うと、痴呆症のような顔で、「きよしこの夜」と歌い始める(2枚目の写真)。これを横で見ていたフィンセントは、思わずニヤリとする(3枚目の写真)。しかし、こんなことで騙されるような『プードル』ではない。「やめなさい!」の一喝で、マイクは普段の表情に戻る。そして、男性の方が、壁のポスターを見て「アヤックスのファンかい? よかったら、いつでも試合に連れて行ってあげるよ。シーズン・チケットがあるから」と言うと、「ホント?」と凄く嬉しそうな顔に変わる。「もちろんだ。じゃあ、行こうか」。フィンセントが、「ダメ」のサインを送るが、もう遅い。
  
  
  

マイクが車で連れて行かれたのは、郊外の広壮な住宅。かなりのお金持ちだが、子供がいないので、里親制度に参加している。玄関には、大きなクリスマスリングに、「ようこそ、マイク」と書かれている(1枚目の写真)。温かい歓迎ぶりだ。中も広くて開放的。「どう思うかい?」と訊かれ、「整然としてる〔Opgeruimd〕」と答える。ちょっと変わった感想なので、新しい「父親」は訊き直す。マイクのアパートは、アル中で掃除もしない母の元で部屋の中が雑然としているので、広さよりも、ゴミ1つ落ちていない状態に感心したのだろう。次のシーン。マイクは庭で寒そうに立っている。「父親」が、いくらサッカーボールを蹴って、マイクと遊ぼうとしても何もせずただ立っている〔本当は、マイクはサッカーが巧い〕。その姿を、「母親」が心配そうに見ている。2人が室内に入って来ると、「母親」が、「マイク、ジャンパー脱いで。すぐに食事よ」と言うと、「寒いよ」と言って、わざと咳いてみせる。「気分が悪い」。「もし、熱があったら、すぐに病院に電話しないと」と、体温計を持ち出し、「測ってみないと」(2枚目の写真、矢印は体温計)。測れば嘘がバレるので、マイクは、「何ともないよ」と言って、ジャンパーを床に脱ぎ捨てる〔行儀の悪さを強調するため〕。その後の食卓では、「あれ、本物?」とツリーを指す。「スウェーデンから来たノールマン・モミだよ。クリスマスには、あの下にプレゼントが並ぶんだ」。「クリスマスには、家に戻ってるよ」。「それはどうかしら?」。「クリスマスは、ママと一緒だよ」。「ここだって楽しいわよ。お母さんを招待したらどうかしら?」。打つ手がなくなったマイクは最後の手段に出る。ユールンが癲癇の発作を起こした時のことを思い出し、床に突然倒れ込むと、体を揺らし始めたのだ(3枚目の写真)。「発作だわ。こんな話、何も聞いてない」。
  
  
  

マイクは、その夜、病院に戻された。あまりの早さに、フィンセントは、「もう戻ったのか?」とあきれる。「ユールンは欲しくないってさ」。「じゃあ…」。マイクは、発作の真似をする。ところが、それを『プードル』に見られてしまう。「癲癇!」。マイクは素早く起き上がると、「知らない人たちと住むのは嫌だ」と言い訳する。『プードル』は、「やったと思ってるんでしょ。でも、あなたは最高のチャンスをダメにしたのよ。覚えておきなさい」と意外なことを言う(1枚目の写真)。フィンセントは、「最高のチャンスだって?」と一笑に付すが、マイクは不安な気持を拭えない。翌日、マイクは、フィンセントの車椅子を押してエレベーターに乗る。向かった先は屋上。「どこに行くんだ?」。「空(そら)」(2枚目の写真)。屋上で、空港から飛び立っていく飛行機を見て、フィンセントは、「エアバスA380。2階建て。ロールス・ロイス製のエンジン」と言う。「何で知ってるの?」。「父さんがパイロットだ」。「クールだ」。フィンセントは、あまり嬉しそうではない。半身不随ではパイロットにはなれないと思ったのだろう。「君の父さんは?」と質問する。「僕には母さんしかいない」(3枚目の写真)〔マイクの父が、離婚したか、蒸発したか、死亡したかは最後まで不明〕
  
  
  

マイクは、ロッテを慰問に行く。彼女は、強い抗癌剤を使用中のため、無菌室に入っている。病室に入るなり、マイクは、「冗談かお話かどっちがいい?」と訊く。「冗談」という返事に、「脚を這い上がる茶色のもの、何だ?」と訊き、返事の前に、「ホームシックになったウンチだ」と答を言ってしまう。あまりに下品な冗談に、それまで暗い顔だったロッテも笑う。ロッテは、すぐに真面目な顔になると、「家に帰ったら何がしたいか分かる?」とマイクに訊く。こちらも返事の前に、「ペットと遊びたい。長いこと会ってないから」とテーブルに置いてある犬の写真を見る(1枚目の写真、矢印はマイクにもらった「幸運」の帽子)。「僕は、遊園地に行って、母さんとバンパーカーに乗りたい」。そう言うと、放射線治療や抗癌剤のため脱毛してしまった時の写真を見せる。マイクは、ロッテに対しては、いつも優しい。マイクとフィンセントが、他の子供たちと一緒に遊戯室で絵を描いていると、クッキーを並べた皿を持ったユールンが、フィンセントに皿を差し出して、「クリスマスだから家に帰るんだ」と言う。フィンセントはクッキーを1個取る。その時、隣のマイクが、「みんな家に帰るさ」と言うと、ユールンは「お前以外はな」と言い、マイクにはクッキーを渡さない。それを見たフィンセントは、「僕も帰らない」と言ってクッキーを返す(2枚目の写真)。2人の友情がよく分かるシーンだ。ユールン:「何で?」。フィンセント:「階段昇降機がまだ出来てない」。ユールン:「哀れな連中だ」。場面は変わり、食堂で、マイク、看護婦、『プードル』の3人がテーブルについている。イスを揺らして遊んでいるマイクに、『プードル』は、「1分もじっとしてられないの?」と厳しく言う。そして、里親とマイクの悪ふざけについて話し合った結果、「もう引き取りたくない」と言われたと話す。「現在、他に資格のある里親はいないわね」。マイクは大喜び。「じゃあ、母さんと暮らせるんだ」。「そう思うの?」。「そうさ。他に行くとこがないもん!」。「それが、あるのよ」。そう言ってハンドバッグから取り出しのは、『De Boei』と書かれたパンフレット。「孤児院?」(2枚目の写真)。「共同生活よ。そこなら空きがある。今から連れていくわ」。「何だって!」。看護婦は「明日はクリスマスなのよ」と、非情な扱いに抗議する。2人が押し問答をしている間にマイクはいなくなる。マイクは、病室に戻ると、フィンセントに「僕、孤児院に入れられちゃう」と告げる。そして、ベッドに入って頭から布団を被る(3枚目の写真)。『プードル』は、病室まで探しに来て、「マイク、行かないと。荷物を詰めるわよ」と言い、棚を開けて荷物を出そうとする。マイクは「僕のものに触るな!」と怒鳴る。看護婦は、「マイクは自分でできます。少し外で話しません?」と、『プードル』を部屋から出す。
  
  
  

マイクは、フィンセントに「母さんのトコに行く」と打ち明ける。フィンセントは、自分の着ていたものを、「これを着ろ」と渡す。そして、マイクのベッドに入って布団を被り、マイクはフィンセントのオーバーを着て、車椅子に乗って外に出て行く(1枚目の写真、矢印)。室外での2人の会話は決裂し、『プードル』はベッドに行って布団をまくる。そこにいたのはマイクではなく、フィンセント。そこから、マイクと『プードル』の追いかけっこが始まる。マイクは厨房に逃げ込み、色々なものを転倒させ、『プードル』の行く手を阻む(2枚目の写真、矢印は『プードル』)。この作戦は成功し、マイクは厨房の裏口から外に出て、近くに停まっていた花屋のバンに隠れる。バンはすぐに走り出し、アムステルダムの都心にある「Hotel De L'Europe」の前で停まる。後ろの扉を開けると同時にマイクが飛び出す(3枚目の写真、花束を持っている)。
  
  
  

マイクは、運河に沿って走る。唯一のアムステルダムらしい場面だ(1枚目の写真、矢印)。一方、病院では、監視カメラ映像で、10時3分にマイクがバンに向かうところが記録されている。看護婦は警察に連絡する。さらに、病室に戻ると、フィンセントに、「警察がマイクを捜してる。どこに行くか、何も言ってなかった?」と訊く。フィンセントは首を振る。「本当なの? 彼は、あなたの車椅子に乗り、あなたは彼のベッドに寝てたのよ」。「知らない」(2枚目の写真)。この頃、マイクはフェリーに乗って、アムステルダムの北に向かっていた〔エイ湾を挟んで北側に広大な団地群ができている〕。マイクは延々と歩いてようやくアパートに辿り着く。低層だが全長200メートルくらいの細長い建物だ。ところが、入口に警察の自転車が2台停めてある。マイクは隠れてやり過ごす。警官は、「彼はいません」と連絡している。警官がいなくなると、マイクはドアをノックするが、応答がない。仕方なく、持ってきた鍵で中に入る(3枚目の写真)。
  
  
  

マイクが中に入ると、そこは何もかもが散らかし放題。テーブルの上には空になったワインのビンが2本置いてある(1枚目の写真)。固定電話から母の携帯に電話をかけると、がっかりしたことに、隣の部屋から呼び出し音が聞こえる。電話を持ったまま、音のした方に行くと、携帯は、壁の電源コードにつながったままだった。こちらの部屋も乱雑なままで、空のワインのビンが2本置いてある(2枚目の写真、矢印は携帯の電源コード)。マイクが携帯を見ると、そこには10件の着信履歴が残っていた。このことは、母が、長いこと部屋を開けていることを意味する。マイクは、思い切って部屋中の片付けを始める。キッチンには汚れた食器が山になっている(3枚目の写真)。すべての部屋の片付けと掃除を終え、ソファに横になると、幸せだった頃のビデオ(DVD)を見ながら疲れて寝てしまう。
  
  
  

朝になって目を覚ましたマイク。「ママ!」と呼んでも、やはり返事はない。携帯の着信履歴の1つに電話してみると、アムステルダムの児童福祉事務所の自動音声につながる。マイクは慌てて電話を切る。『プードル』が執拗に電話をかけてきて、母は一度も取らなかったのだ。その時、玄関のチャイムが鳴る。マイクが窓から覗くと、下にはパトカーが停まっている。映像は玄関の外に切り替わり、警官が、「ファジロフスキーさん…」と紙を見ながらたどたどしく言い、もう1人の警官に「何て名前だ」とぶつぶつ。今度は、もう1人が、「ファジロフスキーさん、いますか?」と声をかける。「こちらは警察です。息子さんを捜しています」。その頃、マイクは、キッチンの棚の中に入れてあったワイン4本を外に出し、中に隠れる(1枚目の写真、矢印はワイン)。警官が玄関を簡単に開けて中に入ってくる。キッチンを覗き、並んでいるワインを見て、「母親はアル中だな」と同僚に言う。さらに、「1.99だ」とも〔1本€1.99の激安ワインのこと〕。「好みじゃないな」。警官は、マイクの部屋のベッドの下まで覗き、いないことを確かめる。マイクが 花屋のバンから盗んできた花束が、テーブルの真ん中に飾ってあったが、そこには、「80歳の誕生日おめでとう」という札がそのまま残っていた。警官は、「この部屋番号、合ってるのか?」と首をかしげる〔玄関のドアには名前など一切書かれていない〕。「多分、クリスマスを家族で過すんだろ」。「また、後で戻ってこよう」。次のシーンは病院。フィンセントが、看護婦に、「マイクは見つかった?」と訊くと、「いいえ」と答が返ってくる。看護婦はさらに、「マイクが見つからないとどうなるか知ってる? あの子、薬を持って行かなかったのよ」。「治ってるじゃない!」。「そう見えるだけ。もし、免疫機能が低下したら、白血病細胞が増殖を始めるの」。この言葉にフィンセントは愕然とする(2枚目の写真)。一方、マイクは、また警官が来ると困るので、母と一緒にもう一度行きたかった遊園地に一人ででかける。しかし、バンパーカーに1人で乗ってもちっとも楽しくない。クリスマスなので、外は寒く、夜には雪が舞い始める。アパートに戻るが誰もいない。警官が来るのを恐れたマイクは、昔、かくれんぼで隠れた鳩小屋で寝ることにする。しかし、壁は薄く、暖房ゼロの小屋の中は、真冬に寝るのは危険な場所だ。おまけに、鳩の糞がいっぱい落ちてくる(3枚目の写真、額に糞が落ちている)。
  
  
  

母が、風船を手に、女性の付き添いと一緒に病室に向かっている。女性は、部屋の前で、「30分よ。じゃあ、また」と言って別れる。母は部屋に入って行くが、マイクの姿がどこにもない(1枚目の写真)。「マイク、いないの?」とフィンセントに訊く。さらに、「クリスマスだから、来させてもらえたの。ここにいると思って」と付け加える。「マイクは、あなたが家にいると思っていました」。「家? 違うわ」。ここでフィンセントの母親が、「マイクは逃げ出したの」と説明する。「逃げ出した?」。フィンセント:「家に帰るって言ってたけど、未だに見つからない」。母は急いで出て行く。フィンセントは、母親から、「じゃあ、マイクのこと全部知ってたの?」と咎められるが、何も言えない。母は、「女性」を捜す時間を惜しみ、1人でタクシーに乗ってアパートに直行する。ドアに鍵が差し込んだままなので、マイクが来たことがすぐに分かる。部屋の中は驚くほどきれいになっているが、マイクはいない(2枚目の写真)。母は、昔のことを思い出し、もしやと思って鳩小屋に駆けつける。そこにはマイクが寝ていたが、意識を失っている(3枚目の写真)。
  
  
  

母は、マイクをアパートに運び、「マイク、目を開け」と呼びかけるが反応がない(1枚目の写真)。母はすぐに病院に電話をかける。夜間なので、受付けの男性が直接看護婦を呼びに行く。「マイクが見つかった。救急車が待ってる」。救急車が来るまでの間、母は、マイクの顔をきれいにしようと、タオルをキッチンで濡らすが、その時、横に4本のワインがあるのに気付き、中身を流して捨てる。そのため、アルコールの匂いがキッチン中に拡がってしまう。看護婦が部屋に入った時、「アルコールの匂いがする」と言って中に入って行く。心証は悪い。救急車の中で、母はマイクにぴったりと寄り添う(2枚目の写真)。マイクはERに連れて行かれる。連れて来た救命士が、「マイク、10歳、2日前に病院から逃走、白血病の病歴、高熱」と告げる。廊下で待つ母を見て、同情した受付の男性が横に座って慰める。次のシーンでは、マイクに対する応急処置が終わり、母が付き添っている。眠ったままのマイクに、母は、「ねえ、坊や、ほんとに心配したわ」と言った後、過去を振り返って、「あなたは、恐ろしい病気にかかってしまった。母親として、強くなければならないのに、あたしはダメだった。代わりに自分が病気になればと思っただけ。でも、あなたは戦って抵抗し、そして、やり遂げた。今度は、あたしの番」と自省する。そして、マイクにキスし(3枚目の写真)、「愛してるわ」と囁くと、病室を出て行く。エレベーターで一緒になった看護婦は、アパートの中でアルコールの匂いがしたことから、アル中で息子のことを顧みない母のことを強い言葉で非難し、母が、「もう飲んでない」と言っても、全く信用しない。しかし、ロビーで会った受付の男性は、母を心配して車で送ると申し出てくれる。車が着いた先は、アルコール依存症の治療施設だった。母:「叱られないといいんだけど」。「子供じゃないでしょう」。「違うの。あたしは、ここを出られない。でも、泣いて頼んで、特別に2時間だけ出してもらったの」。「マイクに会うために?」。「例外として、見張り付きで。でも、こんなに遅くなっちゃった」。「不可抗力ですよ」。「ううん、全部 台無し」。母は、それだけ言うと、車を降り、施設に入って行った。母は、マイクとの「誓い」を守り、ずっと施設で治療を受けていたのだ。
  
  
  

クリスマスの翌日か翌々日、回復したマイクの元に、看護婦がジャンパーを持ってきてくれ、ERの病室から移ることに。途中でフィンセントの姿を見つけたマイクは、嬉しそうに「フィンス!」と叫ぶ。しかし、フィンセントは、逃げるように車椅子を走らせる(1枚目の写真)。フィンセントが乗り込んだエレベーターに、マイクも、「フィンセント、待てよ! 今度は、つんぼになったのか?」と飛び込む。フィンセントは、「何てことしたんだ! 君は治ってないから、家に帰っちゃいけなかったんじゃないか!」と怒る(2枚目の写真)。「いけなくない!」。「また、寝込んだじゃないか。みんなが僕に、君の居場所を訊くし、もう少しで死なせるとこだったんだぞ! なのに、君は逃げることしか考えない!」。「友達だと思ってた!」。「僕もだ!」。「嘘つき!」。「君こそだ! お母さんのとこに行くと言ったけど、いなかったじゃないか!」。「そんなこと、分かるはずないだろ!」(3枚目の写真)。「弱虫!」。「ちんば!」。こうして、2人のクリスマスツリーの周りでの口論は激化していく。フィンセントが、「あんな飲んだくれの母親を持って、なんて哀れな奴なんだ」と罵ってマイクの顔を叩くと、2人は取っ組み合いのケンカを始める。偶然ロビーに降りて来た看護婦が止めに入る(4枚目の写真、右下隅はフィンセントの緑色のジャンパー)。その直後、立ち去ろうとしたマイクの足をフィンセントがつかんだことで、結果として、クリスマスツリーが転倒する大騒動になる。
  
  
  
  

マイクが、自分の病室に戻ると、自分のベッドにはロッテが寝ている! マイクは、同行してきた看護婦に、「僕はどこで寝るの?」と訊く(1枚目の写真)。「大部屋よ。シリア〔『プードル』の本名〕が引き取りに来るまで」。その日、マイクは大部屋で寂しく過す。顔見知りは一人もいなくなっている。翌日、マイクはロッテに会いに来る。「もう、犬に会った?」。「数日だけね。次の化学療法まで家に帰れないし、フィンセントは来週退院する」。「僕も退院するよ、明日ね」。この部分は、フィンセントに向かって言った言葉だ。マイクは、フィンセントに、「何 書いてるんだ?」と尋ねる(2枚目の写真)。フィンセントは書いていたレポート用紙をくしゃくしゃに丸めると、ゴミ箱に向かって投げるが入らない。マイクは、拾って入れるフリをして(3枚目の写真、矢印)、その紙を持って病室を出て行く。
  
  
  

翌日。マイクは、「その日に退院する子供へのインタビュー」番組に出ている。「やあ、マイク、今日が退院だね。さよなら言いたい人はいるかい?」(1枚目の写真)。「フィンセントに。彼はルームメイトだった」。「そうか。で、フィンセントに何ていいたい?」。「なんにも。彼が書いたものを読みたいんだ」。「いいとも、読んで」。マイクは、くしゃくしゃに丸めた紙を伸ばして読み始める。「それは、ごく普通の日だった。フランス語で当たり、ランチを忘れた。ピタゴラスの定理を習い、サッカーをやった。僕は、ジャケットを着ずに自転車で家に向かった。信号待ちの間、クラスの女の子のことを考えてた。信号は緑になり自転車を走らせた。トラックは僕を見てなかった。それは、ごく普通の日だった。普通だった最後の日… 笑ったり遊んだりしていた友達は、どんどん来なくなり、僕も、どうでも良くなった。以前とあまりに違い、次にどうなるか怖かった。残ったもの〔Wat er blijft〕。こんな姿の僕〔Voor wie ik was〕。いっぱいあった夢のかけら〔Voor wat nog rest van al mijn dromen〕。それでも、戦って乗り越えなくちゃいけない。僕は失ったけど勝った。それは、僕一人じゃなかったから〔Ik heb verloren maar ook gewonnen, want ik ben hier niet alleen〕」(2枚目の写真)。言葉に詰まった司会者が、「それで… 家に帰ったら、フィンセントに会いに行くのかな?」と質問する。「家には帰らない」。「帰らない?」。「孤児院に行くから」(3枚目の写真)。「孤児院? 両親はいないのかい?」。「母さんがいるけど…」。「けど? それで?」。「僕のことなんかどうでもいいんだ〔Die wil mij niet meer〕」(4枚目の写真)。
  
  
  
  

インタビューを終わったマイクが悲しそうに歩いていると、車椅子に乗ったフィンセントが病室から出てきて、「君が出てくなんて間違ってる」と声をかける。その背後から、『プードル』が姿を見せる。マイクはあきらめて付いて行く。病院の玄関を出たところで、看護婦が「マイク」と声をかける。マイクは、「母さんが僕を捜しにきたら、僕がどこにいるか話すの?」と尋ねる。「もちろん」。「ただ、こう言ってよ、『マイクから よろしく』って」。看護婦はマイクを抱きしめる。そこに、フィンセントの一家も見送りに出てくる。マイクが、「また会えるよね?」と言うと(1枚目の写真)、フィンセントはかすかに頷き、うなだれる。マイクは『プードル』の車に乗り込む。この女性は、冷静そのもの、何の感情も表さない。そこに、何とか間に合って受付の男性が駆けつける。車から身を乗り出して手を振るマイクを、5人が見送る(2枚目の写真)。車が去ってから、男性が、「治療施設に入ってるのに、母親に公平な機会を与えないなんて間違ってる」と看護婦に話しかける。「治療施設になんか、いないわよ」。「いるよ」。「なんで分かるの?」。「この前、送ってったからさ」。フィンセントが会話に割り込む。「でも、マイクは、そのこと何も知らないよ」(3枚目の写真)。看護婦:「シリアもね」。男性:「プードルの奴は、気にも留めないさ」。「でも、決めるのは、彼女じゃないのよ」。「じゃあ、誰だ?」。再びフィンセント。「家庭裁判所の判事だ」。ロビーに戻った看護婦は、判事に、「ナターシャについて、新しい情報があります」と電話をかける。判事は、「ナターシャは、ここに来られる?」と応じる。男性が、バンに看護婦とヴィンセント一家を乗せて出発。途中で、マイクの母を治療施設から借り受ける。その間に、『プードル』の運転する車は、孤児院の前に到着する。
  
  
  

判事の部屋に集合した5人(1枚目の写真)。母は、治療施設でもらった紙を判事に渡す。一方、マイクは、2段ベッドの並ぶ大部屋に連れて来られ、「これが君のベッドだ」と示される(2枚目の写真)。孤児院の寝室といえば、これまで、大部屋にベッドが並ぶ姿や、4人部屋に2段ベッドがあるところまでは見たが、大部屋に2段ベッドが詰め込まれているのは初めて。最悪の環境だと思わせるために、わざと作り上げたのだろうか? それとも、アムステルダムの孤児院は本当にこんなに劣悪なのだろうか? 担当者のマイクに対する説明は実に機械的、かつ、ずさんで、『プードル』はあくびをしている。福祉行政の貧困さを風刺しているのか? 別れるにあたり、『プードル』は、「これからも、フォローしてほしい?」と訊く。マイクは、もちろん、首を横に振る。「頑張るのよ」。軽く頷く。マイクが最後に質問する。「ずっと、ここにいるの?」(3枚目の写真)。「養子に行く子もいるし、家に帰る子もいる。状況次第ね」。「母さんの?」。「そうよ」。「他に質問は?」。マイクは首を振る。
  
  
  

そこに母が駆け込んでくる。「マイク!」。「ママ!」。2人はかたく抱き合う(1枚目の写真)。『プードル』は、「ナターシャ、何しに来たの?」と鋭く尋ねる。そこに、フィンセントの一家が入ってくる。『プードル』は、「こんなことしたら、マイクが動揺するじゃないの」と機嫌が悪い。最後に判事が現れる。これには、『プードル』も黙るしかない。母は、「マイク、悪いけど ここにはいられないの。治療施設に戻らないといけないから」と説明する。「治療施設に入ってるの?」。「治すためよ」。「いつから?」。「あなたに誓った日から」。「なぜ、話してくれなかったの?」。「ごめんなさい。でも、失敗して、失望させるのが怖かったの」。「気にしなくていいのに。僕だって、まだ治ったわけじゃないし… 僕、これから…」。「治るわよ。それに、あたしは あなたと一緒に暮らしたいの」。その時、後ろで、「何ですって? 今?」という『プードル』の声がする。「でも、手続きに反するじゃないですか」。「分かってますよ。でも、時には柔軟にならないとね」。そう言うと、判事は、「マイク。あなたは、家に帰りたいと強く主張しました。そして、今日、ナターシャの方の状況が変わったことを確認しました」。ここで、母が分かりやく説明する。「判事さんは、もしあたしがこのまま治療を続けたら、あなたは3ヶ月で家に帰れるとおっしゃってるの」。マイクは、文字通り顔をくしゃくしゃにして喜ぶ(2枚目の写真)。「じゃあ、ここで3ヶ月 我慢するよ」。フィンセントの父が、ここで一言。「マイク。フィンセントが何か訊きたいそうだ」。フィンセントは、「それまで、僕の家で暮らさないか?」と訊く(3枚目の写真)。判事が、「どうするの?」とマイクに尋ねる。「フィンセントは僕の最高の友達です」。
  
  
  

画面に「6ヶ月後」と大きく表示される(1枚目の写真)。マイクと母はアパートで楽しそうに暮らしている。今日はマイクの誕生日。「プレゼントたくさんもらえるかな?」。「さあ、どうかしら」。しばらくして、外で、クラクションが鳴らされる。マイクがカーテンを開けると、下では、バンの前で受付の男性が、「ハッピーバースデートゥユー」と歌いながら手を振っている。マイクが「ママ、ウィルムだ!」(2枚目の写真)。ようやく男性の名前が分かる。アパートから飛び出てきたマイクがウィルムに抱き付く(3枚目の写真)〔飛び付き方が激しいので、ぐらりとする〕。ウィルムは、出てきた母ともキスするので、2人がいい仲だと分かる。
  
  
  

マイクが着いた先は小さな飛行場。フィンセントの一家もいる。マイクは、車椅子を押すと、セスナ機に小走りに向かう。フィンセントの父はパイロットなので、マイクへの誕生日プレゼントは、セスナでの初飛行。2人は仲良く並んで座る。「じゃあ、出発だぞ」。マイクとフィンセントは拳骨を合わせてゴー・サイン(2枚目の写真)。離陸を見送る母とウィルムは、いつ結婚してもいい雰囲気だ(3枚目の写真)。セスナが飛び立つと、「マイクから よろしく!」と書かれた幕がたなびく(4枚目の写真)。
  
  
  
  

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